神様が許さない
たまには溜まった本を一気に読む休日もいい。
眠くなったら昼寝をして、お腹がすいたらモグモグしながら。
京セラの創立者の稲盛和夫さん。
JALを立て直したことでも有名。盛和塾を通じて中小企業の経営者に大きな影響を与えた。フィロソフィーを大切にする経営。利他の心。日本を代表する人格の高い経営者。
「心」という本を書かれている。
その中で、京都大学アフリカ地域研究センター初代所長だった伊谷純一郎先生の話が紹介されている。
チンパンジーは草食動物だが、時には牛や羊などの大型哺乳動物を襲う。
ただし「たまに」しか捕らえない。生きていくのに必要な栄養分だけを捕食する。
「節度」がある。生存のための必要最低限。欲望を過剰に拡大させるようなふるまいはしない。
アフリカでは焼畑農業によってタロイモなどの作物をつくっている現地人たちの集落がある。
森林を焼いて畑にする焼畑農業では、一つの場所で収穫を行うのは2~3年が限界で、それ以上連作すると土地の養分がやせほそってしまう。
すると彼らは、次の区画を焼き払って畑とし、そこに種をまいて作物を得る。そこで2~3年連作すると、また次の区画に移って、ということを繰り返す。
しかし、その焼く場所は無制限に拡大していくのではなく、たとえば十区画くらいをめぐると、再び最初の区画に戻ってくる。そのころになれば最初に焼いた場所にも十分に栄養が戻り、森林も育っている。
あるとき食べ物が足りない年があった。
伊谷先生が「食べ物が足りないのなら、もっとたくさん焼畑を作ったらどうですか?」
集落の長老はこう答えた。
「それは神様が許さない」
制限なく森を焼けば、自然の再生力を壊して、それが自分たちの首も絞めてしまうことを彼らは知っている。
原始的な環境に置かれた人たちは、「足るを知る」という節度を心得ている。
本を読むと、こんな楽しい?知識を身に着けることができる。そして自分を振り返ることができる。正しいことばかりではない。しっくりくることばかりではない。それらを含め、多くのことに触れることが意識のどこかを刺激してくれる。
「節度」「足るを知る」「欲望を過剰に拡大しない」
「神様が許さない」という一言で、それを語る人たちが世界にはいる。
ツクツクボウシ拝