蝉が鳴く鳴く

ツクツクボウシの独り言

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殺生

ホテルの17階にいる。南国のホテル。
真夏の日差し、クーラーの心地よさ。
なんとなくの静けさと、ほっとする落ち着き。

外国らしい床がタイルのバスとトイレと洗面所が集結している一室。
トイレに座る。
携帯を触りながら。
ふと、床を見ると、蟻、かな。

よく来たね。17階まで。
どうやって?
登ってきたの、自力で?
それとも誰かにくっついてきた?
なにか食べるものあるかな、ここに?

座っている自分の両足の間を通り抜け、どこへいくのやら、手足を一生懸命動かして進んでいる。

君も生きているね。
きっと一生懸命。

おやおやおや。ふと気が付くと右手の手首あたりをもう一匹が。
小さいので全然気が付かなかった。
どうやって私の手まできたのかな。
不思議。
気がついてしまうと、何か気になる。
どこへいくの?
どんどん肩のほうへ動いていく。
少し動きが私の皮膚で感じることができるようになった。

下に落としてやろうと思った。
でももう一方の手で振り払うと、たぶん衝撃で死んでしまいそう。
軽く手を振って落としてみる。落ちないなあ。
仕方がない。強く振ってみた。
いなくなった。

君も生きているね。

そんな命を奪うことはできない。
なんの罪もないのに。

 

 

 

 

 

 

 

夕食にでかける。
ホテルのビュッフェ。
いろいろな色、いろいろな形、いろいろな匂い。

ブロッコリーが炒めてある。おいしそう。いただこう。
チーズが二種類。大好き。いただこう。
エビの入った焼きそば、かな?なるほど。
豚シューマイ。
ローストビーフ・・・

なんの罪もない命を食べて、私は生きている。
それが生物のしきたり。
わかっている。
ただ、本当に必要であるものだけ食べることができれば・・・。

それができるように。そうなればいいな。

 

 

 

 

 

 

 

小さい一歩から。それがなんであれ。
できることからやっていく。
完璧は目指さなくていい。
少しずつでも。
やれる範囲で。
誰にも強制せず。
私の気持ちとして。

ツクツクボウシ拝

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