HAKUSUI COLUMN

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海無し県民

金曜日は終業のチャイムと同時に定時退勤する。
足早に帰宅し、夕飯と風呂を済ませると早めに就寝する。
日付が変わるぐらいの時間に起きると前日に準備を済ませた釣り具を車に積み込み、海へ向かう。
海無し県民にとって海は特別なもので、海に近づくにつれてワクワクが増していく。これは父親に連れていってもらった子供の頃も、大人になった今も変わらない。
2時間ほど車を走らせて目的地に着いた。
あっと言う間に秋が過ぎてすっかり寒くなった冬の夜。普段ならまだまだ布団を被っていたい3時だというのに海岸線はアングラーで埋め尽くされている。
私も長い砂浜を歩きながら少し広めの隙間を見つけると両隣の人に一言言って入らせてもらう。

水平線の向こうが少し赤味を帯びてきた頃、すっかり冷えてしまった体に今一度気合を入れる。本命のルアーに取り換えて、海の様子を確認してフルキャストする。リールを巻きながらも水面に小魚が跳ねていないか、鳥が海中に飛び込んでいないかよく観察する。
しばらくすると周りで大きく釣竿をしならせる人が現れた。今日は魚がいる日だ。
周りが釣れだすと自分も続くぞ!と手に力が入り、それが焦りに変わる。もう一度、もう一度と何度もキャストするがアタリは来ない。

そうこうしているうちに海面は静かになり、太陽が顔を出して青空が広がる。
今日も釣れなかったかと少し落胆する。始めた頃は釣れないとショックだったし、不満を残しながら帰った。しかし今では別の楽しみも増えた。
水平線から太陽が昇る瞬間の多彩な空の色や、海面を飛ぶ海鳥の群れ、漁港の入り口で顔を覗かせるスナメリ、濃紺の快晴に様々な形を作る白雲、今日も元気に飛び跳ねるボラくん。
そういった自然を感じられるのは、やはり自ら海へ行かないと体験できないことだ。
今日も良いものが見れたと写真に収めると釣り具を片付けて帰路に着く。

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