アイデンティティ
そろそろ蝉の声も違和感がなくなってきた。
夏の初めから秋の始まりまで、いろいろな蝉の鳴き声を聞くことができる。
たぶんこれも日本だからかな。
他の国ではここまで多様性のある蝉の声を聞くことはできないような気がする。
ベトナムの人と会った。
ベトナム戦争で家族がバラバラになり、船を使って亡命しアメリカにわたる人が多かった時代を生きた。
その時、あえてベトナムに残る決断をして、いま孫に囲まれて生活している。
インドの人と会った。
ボンベイ(現ムンバイ)で生まれ、恵まれた家庭で育つものの、三男ということもあり海外で一人で生きていくこととなった。
シンガポールに渡り、妻と出会い、自分たち家族の力で生きてきた。
このコロナ禍で厳しい生活を強いられている。
台湾の人と会った。
その人は言った。私のアイデンティティは何なんだろう、と。
台湾のパスポートは持っている。台湾に住んではいる。
しかし、いずれ中国に併合されるかもしれないという現実。そうすると私は何国人なんだろう。
ビジネスで活躍する台湾人の一定数は、アメリカの永住権を持っている。いざという時のために。しかし、アメリカに住む台湾人も、アメリカの中では人種の違いを認識させられる機会が多いという。
香港の人と会った。
イギリスのパスポートを持っている。
しかし自分の見た目は中国人。
話す言葉は、広東語と英語。
1997年にイギリスから中国に返還され、その後中国の制度がどんどん入ってきている。
自由な世界にいたのに・・・。
これから、私はどこに住むのだろう。私はどこで生きていくべきなんだろう。
あまりにも恵まれている戦後の日本という環境。
一歩外にでれば、私たちが普段想像しない世界が広がっている。
そこで生きてる人たちがどんな人たちなのか。
想像できないどころか、そんなことに心をはせたこともない私たち。
少しでも、違う世界に触れることができればいいのに。
もう少しだけ、自分の内ではなく、外に意識を向けられたらいいのに。
ツクツクボウシ拝