今

人間は素晴らしい進化を遂げた。
文明を育み、便利で心地よい社会を目指して階段を上ってきた。駆け足で。
長寿になり、治らなかった病気も治るようになり、乳児の死亡率も大幅に減少した。
新しい学問が芽生え、宇宙に、海の底に、よりよくを求めて社会は動いている。

いま、この素晴らしい、まだ貧困もあれば戦争もあるが、世の中に生まれ、その社会に染まり、優劣を競い、よりよい生活を目指して、私たちも生きている。
もしあなたが2000年前のアフリカに生まれていたと考えたらどうだろうか？
たぶんあなたはあなたではないかもしれない。別の人格になっていただろうし、あるいはあなたの年齢になる前に死んでいたかもしれない。

だから、今の世の中に生まれたことを感謝、ですね。快適な空調の効いた部屋で、心地よい肌触りの布団に身を包んで、時にはアロマなんかも漂わせながら、たまには好きな音楽もかけることができる、そんな環境で寝ることができるなんて、2000年前では考えられない。

だから、今の世の中を否定するつもりはない。

しかし、少し人間が、あるいは社会が、極端になっている・・・のかもしれない。
生まれてからずっと他人と比較され、目に見える見えないはともかく競争し、負けないように努力することが必須で、そこには勝ち負けという概念が存在し、みな幸せを探している。

なかなか、私は幸せだ、と言える人は少ない。お金の多寡だけでも語れない。人間関係だけでも語れない。

2000年前はどうだったんだろう？彼らは幸せだったのか？そうじゃなかったのか？

なんとなく、私は思う。

彼らは幸せとか不幸せとか考えたことはなかったんじゃないかな、と。

人間を除く動物は、幸せとか不幸せとか思ってるだろうか？きっとそんなことは考えていない。不快だとか、痛いだとか、空腹だとか、心地よいとか、暖かいとか、そんな感覚はあるだろう。

これは何か。

そう、2000年前の彼らは「今を生きていた」。動物たちも「今を生きている」。
それができないのが、素晴らしい文明の中で生まれ生きている私たち。
文明に、そして現代に生まれたことを感謝しつつ、少しは「今を生きて」もいいような気がする。

ツクツクボウシ拝